東洋建設 I 統合報告書 20242030年以降には、これら新しい市場への取り組みを、営業利益100億円規模の「第三の柱」に育成することを目指します。2024年の能登半島地震においても、被災地の本格的な復興CO2削減・省エネ効果の高い次世代電気推進システムを導入当社グループでは、「事業を通じた社会課題の解決」と「事業基盤の強化」を実現すべく、マテリアリティをESGに基づいて整理し、KPIを定めて活動を推進しています。これらの取り組みを進めていくにあたっては、企業にとってのサステナビリティ経営とは何かということを問い直す必要があると考えています。私は、企業が提供する価値には、経済価値、社会価値に加えて環境価値があると考えています。社会や地球をステークホルダーとして捉え、それらステークホルダーに対する価値を創出していくことは、企業にとっての責務です。社会価値や環境価値の創出とは、ボランティア活動や社会貢献活動から生み出されるものだけではありません。むしろ、経済価値を創出する企業活動のなかから創出されるべきものと捉えています。これは「社会価値や環境価値を創出できない経済価値は永続しない」と言い換えることもできます。社会価値の観点では、港湾施設や空港などの社会インフラの建設において高い専門性とノウハウを活かし、安全・安心な社会基盤の整備に取り組んでいます。また、防災・減災、国土強靭化施策に貢献するための技術開発にも注力することで、社会課題の解決に寄与しています。阪神・淡路大震災や東日本大震災では被災地の早期復興に全社を挙げて尽力しましたし、に向けて取り組んでいます。これらの取り組みを通じて、当社グループは社会資本の整備を進め、国民の生命と財産を守るという社会的な責任を果たしていけるものと考えています。環境価値の観点では、洋上風力建設事業への参画が大きな推進力となります。当社が建造する自航式ケーブル敷設船は、しているほか、SOxやNOx等の温室効果ガスを削減する欧州基準の装備を備えるなど環境に配慮した設計となっており、本船の調達資金にはグリーンローンが適用されました。建築事業においても、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)やZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の提案を積極的に行い、エネルギー効率の高い建物の普及を促進しています。国内外に広がる多様なビジネスチャンスサステナビリティ経営の推進会長CEOメッセージトラル関連の事業量は大きく伸びていくと予想しています。前述の「2024年問題」による慢性的な人手不足という業界課題を抱えながらも、しっかりと採算管理を行い、取組案件を選択することで、高い利益率を維持しながら事業を推進することができると考えています。一方、長期的には、日本の人口構造の変化が建設業に与える影響に注視しなければなりません。建設業のような労働集約型事業においては、需要面のみならず、供給面での影響も避けられません。DXやAIを活用した作業の効率化や生産性向上を進めるとともに、フィリピンなど人口増加が見込まれる海外での取り組みをより一層強化する方針です。当社グループの収益構造には、長い実績と高い技術力に支えられた安定収益基盤という強みがあります。売上の8割を公共事業とする土木事業と、安定的な顧客基盤を抱えリピート率の高い建築事業、この2つが当社グループの基盤を支えています。いずれも業界平均よりも高い営業利益率を誇り、高い収益性を維持しています。また、海外建設事業は、選択と集中の結果、フィリピンを中心として展開しています。50年以上にわたるフィリピンでの実績は現地でも高く評価され、抜群の知名度を誇る当社グループの競争優位は一日の長があります。今後は日系や欧米企業から現地の優良企業へと顧客を拡大し、大きな売上の伸長を狙います。加えて、今般、国家GX戦略の主軸と期待される洋上風力建設のマーケットが登場し、当社グループの新しい収益基盤として期待されるところです。発電事業者の事業開始が想定スケジュールどおりに進まない可能性などのリスクも想定されますが、当社グループは海底ケーブルの敷設分野に事業対象を絞り込み、他の建設事業者に先駆けて工事船を発注、日本におけるパイオニアとして先行者利益を狙います。将来的には、直流送電線敷設、二酸化炭素回収・貯留(CCS)など新しい海洋建設にも取り組み、さらには海外進出も視野に入れています。14
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