工事ルポ

新宿区河田町、市ヶ谷本村町付近再構築工事

集中豪雨による都市型浸水を防ぐ

狭隘な国土に急峻な地形が占める割合が多い我が国では、古来より治山治水に取り組んできているが、都市化が進んだ今日では集中豪雨対策などが喫緊の課題となっている。

東京都新宿区住吉町界隈は周辺に比べ地盤が低く、長年大雨による浸水被害に悩まされてきた地区である。そこで東京都下水道局では、この地区を含めた周辺区域全体の浸水被害の抜本的解決策として雨水を収容する下水道を新設することを計画、当社は地域の方々の輿望を担うこの工事を2012年9月から現場着手し、既設水道管の移設などのほか2014年3月からはシールド工法 *1でトンネル掘削に取り掛かった。

*1

シールド工法とは、「シールドマシン」と呼ばれる掘削機械にて、トンネルの先端を掘り進むとともに、その後方部分にコンクリート製及び鋼製の筒(セグメント)を組み立てることにより、下水管を構築していく施工方法である。

急カーブのあるトンネルを掘り進む

この工事は、直径(仕上がり内径)2.2mの下水道管を都営大江戸線「若松河田駅」近くの新宿区河田町を始点として、「都道 余丁町通り」及び「あけぼのばし通り(商店街)」を経由し、新宿区坂町付近の「都道 靖国通り」まで全長約1500mの区間をシールド工法により施工するとともに、そこからさらに開削工事により道路を横断して、既設の下水道管渠につなぎ込むものである。施工途中には急曲線があり、また既設水道管、既設下水道管渠の支持杭(木杭)等がシールド掘進箇所にあるため、単純にトンネルを掘っていけばよいという訳ではない。

序盤のヤマ場は、シールドマシンが発進して約300mの所にある半径12mの急曲線部を掘るところ。僅かなズレでも掘り進むうちに大きな誤差を生み、取り返しのつかないことになるため、中折れジャッキ *2・特殊鋼製セグメント *3を使用して曲線を計画通りにうまく曲げていくための精度管理が重要であり、神経を使う場面であるが、問題なく乗り切った。

*2

中折れジャッキとは、「シールドマシン」の前胴部と後胴部の間に装備されているジャッキのことで、このジャッキを調整することによりマシン自体に折れ角を作り、急曲線の掘進を可能にする装置のこと。

*3

セグメントは、コンクリート製と鋼製があり、曲線部については幅の短い鋼製セグメントを使用することにより、所定の曲線(カーブ)を確保する。

シールドの支障となる既設水道本管を移設する

施工区間の後半には、シールドマシンで掘り進むと既設の水道本管に当たってしまう箇所があるため、この箇所についてはあらかじめ開削工事を行い、水道本管を移設しておく必要がある。ただこの施工箇所は商店街を横にそれた道路幅の狭い区道であり、この条件下で水道本管φ
1100mmを移設する作業は、困難を極めた。

「狭い道路上で日々規制帯を設置し、歩行者通路を確保しながらの厳しい作業でしたが、住民・商店の方々のご理解・ご協力、協力会社さんの頑張りに助けられました。また施工方法・作業手順の見直しにより、作業期間中のご迷惑を最小限に抑えるように工夫しました。」と現場の責任者である川元克哉作業所長は語る。

工事はいよいよ佳境へ。緊張の日々が続く

2014年10月末時点でトンネルは全長の約半分まで掘り進んでいる。しかし、これからが工事の本番だと川元所長は話す。「この先には既設の下水道管渠の支持杭(木杭)があるので、地盤改良・杭撤去・掘進を繰り返しながらの施工となります。シールドマシンには地盤改良システムと地中障害物を切断できる超高圧噴射ノズルが備えられていますので、これらを駆使して慎重に施工することになります。また、シールド到達部である靖国通りでは、今後開削により道路を横断して下水管を新設し、既設下水道管渠につなぎ込むのですが、地中には各種埋設管、地下鉄構築物等があるため、綿密な施工計画を立て、関係者と十分な協議を重ねる必要があります。開削工事については夜間の限られた時間での作業となり、明け方には再び道路を開放しなければなりません。時間的制約があるなか、施工効率と安全の両立を図っていくことになりますので、緊張の日々が当分続くと覚悟しています。」

このように都市土木の工事の難しさを語ってもらったが、川元所長の表情からは今まで数々の都市土木工事をこなしてきた自信のほどが窺える。先は長いが必ずや地域の方々の期待に応えてくれであろう。

工事名称 新宿区河田町、市谷本村町付近再構築工事
工事場所 東京都新宿区河田町、市谷本村町、余丁町、住吉町、片町
工期 2012年6月15日~2015年2月27日(延伸予定)
発注者 東京都下水道局
施工者 東洋建設
工事内容 鉄筋コンクリート管 7.5mm φ1350mm
円形管(シールド工法 一次覆工(二次覆工一体型)) 1,338.30m φ2200mm
円形管(シールド工法 一次覆工) (187.75m) φ2200mm
円形管(シールド工法 二次覆工) 187.75m φ2200mm
短形きょ 15.65m 2200mm x 1200mm
人孔 3箇所、既設人孔改造 2箇所
付帯工 一式