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Project Story

Project Story

03

洋上風力事業への挑戦。
成長ドライバーとして新たな事業の柱へ。

着床式/浮体式・洋上風力プロジェクト

Prologue

現在、カーボンニュートラル社会実現に向けたさまざまな取り組みが、世界的に加速している。その実現のために不可欠とされるものが再生可能エネルギーの拡大・普及だ。再生可能エネルギーの中でも最も期待されているのが洋上風力発電であり、これは世界的な潮流ともなっている。東洋建設は、海洋土木で培った知見を活かし、洋上風力事業への挑戦を開始した。中期経営計画においても、洋上風力事業を成長ドライバーと位置付け、近い将来、洋上風力市場への本格参入を図る考えだ。現在、洋上風力・海上工事のトップランナーを目指し、着床式・浮体式の2つの技術開発が進められている。その中核を担うメンバーが、事業の現在地と今後の展望を語った。

Member

  • 「泉 照久」のイメージ

    洋上風力

    1996年入社

    泉 照久

    所属

    執行役員 洋上風力事業本部長

    出身

    理工学研究科 土木工学専攻修了

  • 「草柳 孝義」のイメージ

    洋上風力

    2014年入社

    草柳 孝義

    所属

    洋上風力事業本部 船舶機械部

    出身

    デザイン工学部 デザイン工学科卒

  • 「吉田 勝」のイメージ

    洋上風力

    2016年入社

    吉田 勝

    所属

    洋上風力事業本部 工事統括部

    出身

    社会環境工学科 地圏工学専攻修了

  • 「ラマ スニル」のイメージ

    洋上風力

    2021年入社

    ラマ スニル

    所属

    洋上風力事業本部 工事統括部

    出身

    土木工学部卒(インド)

  • 「トリム ケイラブ」のイメージ

    洋上風力

    2021年入社

    トリム ケイラブ

    所属

    洋上風力事業本部 管理部

    出身

    異文化学部卒(アメリカ)

Project Story 明日のためのモノづくり

Episode 01

東洋建設の海洋土木知見と技術を活かし、
洋上風力の海洋工事でトップランナーを目指す。

プロジェクトの背景・経緯と、自己紹介からお願いします。

東洋建設は、洋上風力事業に関しておよそ10年前から調査を進めており、当社の海洋土木の知見や技術を活かせば、この市場に参入し十分結果を出せるのではないかと考えていました。そしてカーボンニュートラル社会の実現に向けて、再生可能エネルギー導入の機運が一層高まる中、日本における洋上風力発電事業が2030年代以降大きく拡大することを見据え、2021年に洋上風力部を立ち上げました。中期経営計画では、洋上風力事業の海上工事分野でトップクラスのシェアを獲得し、東洋建設の収益の柱にすることを盛り込んでいます。現在は、着床式および浮体式の二つの基礎技術開発を進めており、2027年頃に着床式、その後浮体式の商用化を目指しています。具体的な取り組みについては、今日集まった4人のメンバーに任せたいと思いますが、まずは新しい挑戦への想いも含めて、自己紹介をお願いします。

ラマ

私はインドの大学を卒業後来日し、陸上土木の仕事に就きました。その後転職を考える中、当社に洋上風力事業の部署が新設されたことを知ったのです。そのチャレンジングな姿勢に惹かれ、東洋建設への入社を決めました。入社した当初は、洋上風力発電の知識が少なく、最初の数カ月は興奮と不安が入り交じった気持ちでした。現在はこのプロジェクトを成功すべく、先輩方のサポートを受けながら、主に基礎技術開発に取り組んでいます。

トリム

私は日本育ちのアメリカ人で、高校卒業まで日本で暮らし、大学と仕事はアメリカでした。バイリンガルの強みが活かせる職場で働いていましたが、日本の会社で働きたいとの思いがあったので、海外企業との渉外業務などを担当できる東洋建設の洋上風力事業の仕事を聞き、興味を持ちました。

草柳

私は機械職として東洋建設に入社しました。機械職の仕事は作業船など当社が所有する機械の維持管理業務が中心になります。これまでは作業船の建造・修理、国内外での船舶を使用した港湾工事にも従事してきました。洋上風力事業では、今までの経験を活かして業務に取り組んでいきたいと思っています。

吉田

私は入社以来、東北支店で土木工事の施工管理を担当してきました。洋上風力部への異動を伝えられたときは、期待や不安よりも驚きが先に立ちましたね。すでに私の役割は決まっていて、浮体式洋上風力のオフショア実証実験※。国内での実績のない大水深下での鋼管杭打設で、その新しい挑戦のメンバーに抜擢されたことを光栄に感じました。 ※海外企業の作業船を用いて北海道・石狩湾新港沖で実施した実証実験

アメリカ出身のトリム、ネパール出身のラマなど多様なバックグラウンドを持つメンバーが活躍する。

洋上風力の部署が新設されることを知り入社を決めたラマ。洋上風力の知見は少ないながらも技術開発に挑む。

海洋土木に関する知見・技術といった強みを活かし、多様なポジションでの事業参入を企図する中、着床式、浮体式双方に対応すべく、技術開発が進められている

Project Story 明日のためのモノづくり

Episode 02

洋上で風車を保持するための独自の技術開発を推進。
着床式「サクションバケット」、浮体式「TLP」の優位性。

東洋建設が取り組む「着床式」「浮体式」技術について教えてください。

洋上風力発電においては着床式・浮体式と呼ばれる2つの技術があります。ラマさんは入社時から着床式と浮体式の技術開発に関わっていますので、説明をお願いします。

ラマ

洋上は陸上に比べ風況が良く、土地や道路の制約もありません。また景観や周囲の影響も限定的で多くの風力発電において大きなメリットがあります。しかし、問題となるのは洋上で風車をどのように保持するかです。海底に杭などの基礎構造物を打設して、その上に風車を乗せるのが「着床式」で遠浅の海域(約30m)で採用されています。浮体を係留して風車を乗せるのが「浮体式」で、大水深の海域(約100m)での活用が想定されています。欧州のように遠浅な海域と比べ、海岸の近くから深い海域が広がっている日本では、浮体式の実用化が洋上風力発電市場の拡大に欠かせません。浮体式は、日本はもとより世界でも実用化されていない、先端の技術領域になります。

吉田

着床式はすでに一部で実用化が始まっていますが、将来的には浮体式が不可欠。現状、着床式の開発が先行している中、当社は独自の方式を採用していますね。

ラマ

そうですね。通常の着床式の場合、一般的に基礎杭を打設する方法が採用されますが、当社はサクションバケットと呼ばれる基礎形式の開発を進めています。この形式は基礎を形成するバケット内部の排水による水圧を利用してバケットを貫入します。日本の地盤に適した工法で適地拡大に貢献しますし、大型設備が不要なため低コストが実現するなど、多くのメリットがあります。私は研究所内での実験から実海域での実証実験にも関わってきました。「サクションバケット基礎」は2023年に第三者機関による評価証を受領しています。

浮体式では、実海域での実証実験を吉田さんが担当しました。浮体式も着床式同様に、いくつかの工法がありますが、当社は「TLP浮体式係留技術」の開発を進めています。

吉田

TLPはTension Leg Platformの頭文字を取ったものです。浮体式は大きく分けて、緊張係留と緩係留に分けることができますが、TLPはTensionとあるように緊張係留の方式を採用したものです。その名の通り海底基礎との緊張係留により浮体を係留する方式。TLP方式のメリットは、他の係留方式に比べて海面下での占有面積を1000分の1程度まで抑えることができるため、漁業や船舶運航などへの影響が少ないことにあります。また、浮体の安定性が高く、今後主流となる大型ウインドタービンをコンパクトな浮体に搭載することが可能であり、発電コストの低減も期待できます。

サクションバケット基礎の施工実験の様子。2026年頃の実用化を目指し技術開発が進む。

TLP方式の実用化に向けた杭の引抜き実験の様子。国内最大規模の鋼管抗を用い、繰り返し荷重を用いて杭の引抜きを行ったものだ。

Project Story 明日のためのモノづくり

Episode 03

海外企業との協働で求められる契約交渉、
大水深施工技術実験、ケーブル敷設船の新規建造、
浮体式洋上風力の実現可能性検討など、
取り組みは加速する。

メンバーそれぞれの具体的な取り組みを教えてください。

トリム

洋上風力発電は欧州が先行していますが、世界的に参入が活発化しています。当社もその一員になるわけですが、事業を進めるためには国内外の多くの企業と連携する必要があります。サプライヤーとの交渉、エンジニアリングの導入、傭船等々、あらゆる面で発生するのが契約で、秘密保持契約や業務委託契約、傭船契約※など多岐にわたります。豊富な経験や技術を有する海外企業と連携していくために、私は契約の締結に必要となる交渉等の業務に従事しています。 ※他者が所有する船舶を運送や作業用などに借用する契約

トリムさんの存在はプロジェクトを進めるために必要不可欠ですが、実際の交渉の場では厳しさや大変さもあると思いますが、どのように乗り越えてきましたか。

トリム

文化や商習慣の異なる海外企業との契約交渉はやはり大変です。一般的に交渉は、共通点を見出していくことだと思いますが、他の国の方との関係になると、同じ目的であっても違う進め方や考え方に戸惑うことが少なくありません。そのため相手の会社の方針やスタンスを深く知るなど事前準備が大切。また、海外経験や異文化の知識を活かし、相手に日本の文化や進め方を説明しながら丁寧に交渉を進めることを心掛けています。

吉田

私が担当した浮体式洋上風力の係留基礎開発を目的としたオフショア実験でも、トリムさんの契約交渉でシンガポールから傭船し、実験を行いました。これは、TLP方式による浮体式洋上風力発電の開発に向け、北海道・石狩湾新港沖で行った大水深施工実験です。国内最大級の長さ60mの鋼管杭を海中の地盤に打設し、鋼管杭の施工スピードや精度を検証するとともに、設計引抜力を確認し、また周面地盤の抵抗力なども計測しました。

トリム

私も他の国との契約交渉には苦労する場面も少なくありませんが、外国船籍であったことで、難しさもあったのではないでしょうか。

吉田

例年にない荒天で乗船することも大変でした。また実験期間中はオフショアに停泊する外国船籍から下船することはできません。慣れるまで数日かかりましたね。また安全管理に国内と海外で大きな違いがありました。海外は分業制が主流であり、デッキ作業員、測量士、船舶航行、ROV(水中ドローン)操作、ハンマ操作(鋼管打設)など、各作業のプロフェッショナルが施工を進めていきます。各業者をまとめる統括管理の重大さを改めて実感しました。今回は実験に必要とする船舶が国内にないため、シンガポールから傭船しましたが、当社の洋上風力事業の核の一つになるのが、草柳さんが担当しているケーブル敷設船ですね。

草柳

はい。国内最大、世界でも最大規模の自航式ケーブル敷設船の新規建造です。通常、海上作業船の多くはエンジンを積んでいないハシケと呼ばれる台船です。他船に牽引されて海上を移動するわけですが、建造するケーブル敷設船は自ら航行する自航式であることに大きな特徴があります。加えて容量9000tのケーブルタンク(ケーブルを格納するタンク)を搭載しますから、大規模なウインドファームや長距離のケーブル敷設にも対応可能です。250t吊りのクレーンも設置するため着床式・浮体式の基礎施工など、さまざまな外洋作業に活用することができます。

北海道・石狩湾新港沖で行った大水深施工実験では、長さ60mの鋼管杭を海中の地盤に打設し、施工スピードや設計引抜力の検証などが行われた。

吉田が中心となって行われた大水深施工実験の船上にて。海外企業との仕事の進め方の違いに苦労しながらも無事実験は完了した。

全長150m、幅28mの国内最大の自航式ケーブル敷設船の建造は、東洋建設の過去最大規模の投資となる。

2027年度の工事投入を目指し、草柳を中心に海外の造船会社で建造が始まっている。

吉田

ケーブル敷設船の建造が2024年から始まりましたね。建造に至るまでの経緯を教えてください。

草柳

数年前にヨーロッパの造船会社数社に向けてスペックを出して建造を打診、コストや性能を検討して建造する造船会社を決定しました。2026年6月に完成、2027年に工事投入を目指します。建造は海外の造船所で実施されますが、私は現場で造船管理を行う予定です。会社の設立以来の最高額の設備投資であり、今後の洋上風力事業の柱として重要な役割を担っていく船舶ですから、建造を遅滞なく進めていきたいと考えています。

ラマ

私はケーブル敷設船に直接関わっていませんが、「敷設」について教えてください。洋上風力発電サイトからケーブルを陸上まで牽引するイメージでしょうか。

草柳

その通りですが、海底ケーブルを単に配置するのでなく埋設する必要があります。浅い海では漁船の底引き網や錨等に接触する可能性もありますし、深い海では海中に浮いてしまわないように海底地形に沿って埋設しなければなりません。しかし大水深の海での埋設施工の前例はほとんどありません。その中で、低コストで実現できる施工技術の開発を進めています。

ラマ

現在私は、着床式の基礎技術開発を進めるとともに、浮体式基礎技術の開発に注力しています。さまざまな浮体構造、基礎形式、土質条件での適用可能性検討を担当しており、特に係留力の基となるドラッグアンカーと呼ばれる基礎の検討を数多く実施しています。現状、浮体式洋上風力の技術はまだ成熟しておらず、商用化前に実現可能性を確認する取り組みを進めています。

草柳

ラマさんは、入社時は洋上風力に関する知見は持っていなかったわけですが、実務を進める上でハードルもあったのではないでしょうか。

ラマ

はい。そのハードルを乗り越えるために、洋上浮力技術に関する論文を数多く読みました。さらに、係留システムの運搬と施工方法に関連する技術については、外洋作業に知識を持つ海外企業のサポートを受けました。彼らの専門知識がなければ、さまざまな視点から施工方法を明示することはできなかったと思います。現在は実現可能性検討の段階ですが、将来の商用化に向けて実証段階に進むことを楽しみにしています。また、このチームの一員になれたことをとても嬉しく思っています。

Project Story 明日のためのモノづくり

Episode 04

カーボンニュートラル社会
実現に貢献するやりがい
メンバー全員を結集してプロジェクトは進む。

プロジェクトのやりがい、今後の目標を教えてください。

吉田

日々勉強の毎日ですが、この新しい分野においてさまざまなことに挑戦できることに、とてもやりがいを感じています。カーボンニュートラル実現のために、このプロジェクトはとても重要な取り組みですし、日本において浮体式洋上風力を普及させることは、大きな社会的意義があると思っています。そのためには、基礎施工技術の確立に加えて低コスト化が不可欠です。この大きな課題に取り組み、実現を目指していきます。

草柳

今回のプロジェクトに参加したことで、今までの業務経験を活かしながらも、新たな課題に対応することが求められ、日々刺激を受けています。それがモチベーションの源であり、プロジェクトが一歩一歩前進していく手応えの中にやりがいを感じています。まずは、建造が始まったケーブル敷設船を無事に完工させることに注力していきます。

トリム

私は直接モノづくりには関わっていませんが、プロジェクトにとって契約業務は、事業の土台だと考えています。ですから、プロジェクトの進捗報告や完成した成果物を見たときに、その裏側に自分の仕事があることにやりがいを感じますね。また洋上風力事業ではさまざまな国の方々との協力が不可欠ということ。各国から資機材を調達し、多くの国の技術者の力を借りる必要があります。文化の違いを乗り越えて、皆の力を合わせてプロジェクトを進めていきたい。そのためにも、より良いコミュニケーションを通して、東洋建設と広い世界との架け橋となりたいと考えています。

ラマ

私は、浮体式の基礎技術検討で得たさまざまな知見を活かし、また先行する欧州の技術を日本の市場に導入し、東洋建設が洋上風力・海上工事のトップランナーになるための一翼を担っていきたいと考えています。

ラマさんが言ったように私たちが目指すのはトップランナー。そして忘れてはならないのが、私たちはインフラを担う企業ということです。洋上風力もインフラの一つ。インフラ整備に貢献していくことが、私たちの社会的使命であり、それを果たすことに仕事の喜びもやりがいもあります。メンバー全員の力を合わせ「One Team」となって、プロジェクトを進めていきたいと思っています。

草柳、吉田、ラマ、トリムをはじめとした総勢約40名のメンバーが、東洋建設の次の成長ドライバーを担っていく。

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