工事ルポ

栄・常盤地区第一種市街地再開発事業施設建築物新築工事

工事ルポ

公益施設・医療福祉施設・商業施設・住宅・駐車場が複合開発されたコンパクトな都市空間の形成。

長崎県第2の都市である佐世保市の中心市街地に所在する三ヶ町商店街~四ヶ町商店街は、約1㎞に及ぶアーケード商店街を形成しており、多くの通行客で賑わう「日本一元気な商店街」としてその名を知られている。

計画地はその三ヶ町商店街の中にあり、全天候型のアーケードとそれと交差する市道とで形成された4つの街区からなる。恵まれた立地を活かして、あらゆる世代の交流の場として、公共、公益施設、医療、福祉施設、商業施設、住宅、駐車場が複合開発され、街の新しいランドマークとなるものと期待されている。(栄・常盤地区再開発組合事業概要抜粋)

高齢化が進む地方都市におけるコンパクトシティーとして、理想的な都市空間の形成がなされており、今後の地方都市における市街地再開発のお手本となるべき事業である。

当社は平成23年10月に着工し、栄南街区、栄北街区、常盤北街区と3街区を順次完成させ、現在は4街区目の常盤南街区の施工中である。

現場位置図
現場位置図

アーケードをまたいで3街区の同時施工

3街区の躯体を施工中。写真中央下が栄北街区

今回の工事の特徴は、アーケードと市道で区切られた4街区での施工になり、その内3街区を同時施工となる点だ。施工場所へのアクセスは、三ヶ町商店街アーケードと直行する市道のみで、その接道部分は各街区20m程度、アーケードをまたぐ交差点での工事であることから、アーケードを利用するお客様の安全確保や営業中の店舗への影響を最小限にすることが最優先である。

そのなかで、工事に伴う膨大な量の資機材の搬入出を効率的に行い、工事を円滑に進捗させることが最大の課題であった。

アーケードでの工事において避けて通れないのが夜間作業である。今回の工事においても様々な夜間作業がおこなわれたが、職員の緊張感がピークに達したのがタワークレーンの解体作業で、アーケードをほぼ通行止めにし、開閉式のアーケード屋根を開けての大型クレーン作業は、小さなミスでも重大災害に繋がる一瞬たりとも気の抜けない作業である。

綿密な作業計画の立案と打合せを行った職員が固唾を呑んで見守るなか、大型クレーンのオペレーターと鳶工(タワークレーン解体工)との息の合った作業により、タワークレーンのブームは無事切り離された。現場関係者全員に安堵の笑みが広がる。

タワークレーン解体の準備に入る。右の建物は竣工間際の栄南街区
アーケードの屋根を取り外し、クレーンのブームを空に向けて伸ばす

3街区の竣工

2013(平成25)年4月に栄南街区、同年6月に栄北街区、同年8月に常盤北街区と順次竣工し、現在4街区中3街区の引き渡しが終わっているが、再開発が始まる前と比べてアーケードの人通りが増え、当社が施工した建物のなかに開店した店舗への利用者も多く、アーケード全体が賑わっているという。

担当者は「街が賑やかになるのを見ると、建物を施工するだけではなく、街づくりにも貢献していることに実感が湧く瞬間である」と話す。建設会社としての使命を果たしたと感じるときだ。

再開発事業最終章に向けて

仲村 政和作業所長 (目前に栄南街区、佐世保港が前方に広がる)

竣工まで残りおよそ6ケ月(2014(平成26)年3月時点)。再開発事業で最後となる常盤南街区の現場を切り盛りする仲村作業所長に話しを聞いた。

「前任者より引継ぎ、最終4街区目を任されることになりました。これまでの3街区での施工は1街区毎に1現場を形成しながら、3現場を同時に施工していくというものでしたので、現場間の調整が大変でした。後半からは労務不足に悩まされる事態にも直面しましたが、これまで培ってきた当社の住宅分野でのノウハウや福祉施設での施工実績などの経験を生かし、完成度の高い建物が出来たと思っています。残り1街区となりましたが、これまでの施工において良かった点を踏襲しつつ、更に工夫・改善を加えていき、より良い建物を完成できるよう日々努力して行きたいと思います」と力強く語ってくれた。

コンパクトシティーとして、理想的な都市空間の形成を目指しているこの事業も4街区目に入った。住宅部分は完売し、高齢者施設も順次入居が始まっている。

最終章の工事内容は、中央公民館、こども発達センターの公益施設、自走式の立体駐車場。3街区が竣工し、商店街も賑わいを取り戻しているが、この4街区目が竣工し、グランドオープンを迎えて、理想的な街づくりが完結する。責任の重さを感じつつも、建物完成に向けて達成感を味わえるのはあともう少しだ。

工事名称 栄・常盤地区第一種市街地再開発事業施設建築物新築工事
工事場所 長崎県佐世保市栄町、常磐町
工期 平成23年9月〜平成26年9月
事業主 栄・常盤地区市街地再開発組合
設計者 株式会社日本設計九州支社
施行者 東洋・堀内・誠伸建設共同企業体
建物概要 栄南街区 RC造地下1階・地上16階・塔屋1階 建築面積990.09㎡
延床面積7,455.37㎡ 共同住宅74戸、公益施設、商業施設
栄北街区 RC造地上12階 建築面積905.24㎡ 延床面積7,510.66㎡
高齢者福祉施設、クリニックモール、商業施設
常盤北街区 SRC・RC造地下1階・地上17階・塔屋1階 建築面積1,273.43㎡
延床面積10,533.62㎡ 共同住宅84戸、公益施設、商業施設
常盤南街区 SRC造地上6階 建築面積1,581.32㎡ 延床面積8,37916㎡
公益施設、商業施設、駐車場