工事ルポ

平成24年度10号地その2多目的内貿岸壁(-8.5m)桟橋整備工事

工事ルポ

大規模地震に耐えうるフェリーターミナルに

現場位置図

当社の本社が所在する東京都江東区青海から車で10分ほどの場所に東京港フェリーターミナルがある。

ここから東京と徳島、新門司をつなぐカーフェリーが就航しているが、近年の内貿 *1のユニット化の進展やフェリーの大型化への対応、更には大規模地震時における海上輸送機能の強化を目的として桟橋式の岸壁の再整備が行われている。

特に大規模地震によって陸上の道路が寸断された場合、救援物資等は海上ルートで送られることになるが、このような非常事態でも物資が確実に揚陸できる岸壁があるということは、首都圏に住む人々にとってどれだけ心強いことであろうか。

当社は、「10号地多目的内貿岸壁」第3バースで平成25年3月から既設桟橋上部の撤去、後背地の地盤改良、新しい桟橋となるジャケット *2の製作などを行っている。

*1国内の海上輸送を取り扱うこと
*2鋼管トラス基礎と鋼製上部工を一体化した構造物のこと

鋼管杭の打設精度がポイント

鋼管杭の打設状況を計測。僅かな誤差が命取りになる

この工事の成否を握る鍵のひとつに、鋼管杭の打設があげられる。既設桟橋の基礎となっていた鋼管杭のほかに新たに鋼管杭を打設し、その上に別途製作しているジャケットを据付けるというのが、工事の流れである。ジャケットの据付けは次期工事で行う(東洋・株木・錦海運JVが引き続き担当)ことになっているが、400tものジャケットを33本の鋼管杭(既存鋼管杭19本、新設鋼管杭14本)の上に「スポッ」と差し込むことができるかは、鋼管杭の打設精度の高さにかかっている。

と、言うのもジャケットのレグ *3tは新設鋼管杭より僅か67㎜大きいだけであり、ほんの少しでも位置がずれたり、斜めに打設しようものなら、所定のところまでジャケットが入らない恐れがあるからだ。

また、陸上では地盤改良を行っているのであるが、この改良作業が既設鋼管杭を変位させる要因となりかねず、職員による付きっ切りの計測が欠かせなかった。

様々な状況変化によって、予定より時期は大きく遅れたが無事に鋼管杭の打設は完了。次はいよいよジャケットの据付だ。

*3 脚のこと

A-2工区のジャケット上部桁詳細図。21m×26.8mもの大きさがある
製作中のジャケット。北九州から海上輸送する
AA-2工区の前で。後方は徳島~新門司間を結ぶフェリー

職員や協力会社をはじめ、あらゆる関係者に感謝

苗木 謙二作業所長

竣工検査を間近に控え、多忙のなか当工事の苗木謙二所長に話しをうかがった。
「思うように工事が進まないなか、共同企業体の職員や協力会社さんの頑張りに助けられました。また、関係先には心配とご迷惑をかけたと思います。また、海を汚さないことにもずいぶんと気を使いました。」と苗木所長。既設桟橋の上部や既存鋼管杭上部のモルタルライニングの撤去に当たっては、桟橋の下に仮設足場を設置してシートを敷設。コンクリートガラやコンクリート切断時に使う水が海に落ちないようにした。勿論法規上求められていることであるが、「海を守る」というマリコンの技術者のプライドを感じた。
「次期工事でのジャケット据付けは、正直不安もあります。」と語る。ジャケット製作を担当した会社でも打設済み鋼管杭への据付の場合、20本程度のレグ本数が最高らしい。

それでも苗木所長の顔には切迫感は感じられない。入社して24年の間に積み重ねてきた経験が不安を凌駕しているのであろう。
ジャケットの据付けは平成26年5月に行われる予定だが、周りの職員や協力会社を鼓舞しながら無事終える姿が容易に想像できた。