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福岡市のアイランドシティに高速道路を伸ばす
九州地方最大の人口を有する福岡市は、天然の良港である博多湾に面していることから古くから大陸方面への玄関口として発展してきた。その博多湾の東部に、港湾機能の強化や快適な都市空港間の形成、新しい産業の集積拠点の形成などを目的として、1994(平成6)年から整備されてきたのが「アイランドシティ」である。
一方、福岡市内は一般道のほか福岡都市高速道路が整備されているが、アイランドシティに病院やマンション、新青果市場などが建設され、また周辺にある大型商業施設への来場者の増加とも相まって、近傍道路の渋滞が激しくなってきている。
そこで、福岡市東部地域の交通混雑の緩和と広域的な交通需要や港湾物流の増加などに的確に対応し、交通の円滑化を図ることを目的に整備されているのが「福岡高速6号線」である。
当社は延長約2.5kmの高速道路のうち、海上部分に建設する橋梁の下部工事を2016(平成28)年8月から担当している。
施工の可視化を図り、高精度で鋼管矢板を打設する
水域で橋脚の下部を造るには、大別して杭基礎とケーソン基礎の2種類があげられるが、今回の工事では杭基礎の一工法である鋼管矢板井筒基礎が採用されている。
この工法は、鋼管矢板を小判状に打設したのち、海水をポンプで汲み出してドライな状態にし、そこに基礎と橋脚の柱、梁部分を造っていくものである。
さて、本工事入札時の技術提案のテーマは、鋼管矢板の打設精度に関するものであった。当社は、自社開発した「鋼管杭打設管理システム」を用いた施工方法等で提案し、受注に至ったのであるが、実際の施工においても、そのシステムの性能を遺憾なく発揮できている。
松本和久所長は「設計上の許容値は±10㎝ですが、このシステムを使うことで許容値の半分程度の値で、精度よく打設することができました」とその成果を語る。
サンプル画面でわかるとおり、鋼管杭の編心や傾きがリアルタイムで確認できるのが特徴である。従来は、測量をしている職員から杭の傾き方向などを無線で連絡が入り、オペレーターがその都度打設の方向を調整していたのであるが、オペレーター自身が視覚的に杭の打設方向を捉えることができるので、より易しく、かつ精度よく打設することが可能である。
建設業界ではi-Constructionの導入が進みつつあるが、海中など特に見えない場所での施工が多い海上土木工事では、このようなシステム導入による可視化が進めば、より一層施工精度のアップにつながることになろう。
いよいよ工事は佳境に。品質確保は施工者の務め
工事はこれから躯体の築造に入り、いよいよ佳境を迎える。
躯体工でのポイントは、いかにコンクリートにひび割れを生じさせないかにあると松本所長は話す。「ひび割れ対策は様々な方法がありますが、この工事ではNETIS*に登録されている新しい技術をできる限り使うようにしています。今までと同じ方法で施工することも検討しましたが、最新の技術を取り入れていくことで、より高い品質の確保を目指しました。」NETIS登録技術の活用はコンクリートのひび割れ対策に留まらず、井筒内を掘削して排出された土砂の改良など多種に及んでおり、若い職員にとっても良い経験になるに違いない。
また、もう一つの可視化として3次元モデルの活用を進めている。施工フローや仮設計画図などを3次元モデルで作成することで、誰もが容易に完成形を把握することができる。
発注者はもとより、協力会社との作業打ち合わせにも大変有効であり、これも品質確保のための大切なツールとなっている。
品質確保は施工者の務めであるが、より高いレベルにチャレンジする姿に技術者としての矜持を垣間見た現場であった。
NETIS*
新技術情報提供システム(New Technology Information System)の略称
国土交通省が、新技術活用を図るため、新技術に関わる情報の共有及び提供を目的として整備したデータベースシステム
工事名称 | 博多港(アイランドシティ地区)道路(IP23)橋梁下部工事 | ||
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工事場所 | 福岡市東区香椎浜ふ頭地先 | ||
工期 | 2016年8月25日~2018年3月28日 | ||
発者 | 国土交通省九州地方整備局 | ||
施工者 | 東洋建設株式会社 | ||
工事内容 | |||
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