工事ルポ

ロジスクエア春日部倉庫新築工事

交通の利便性が物流の鍵に

春日部市は埼玉県の東部に位置し、人口23万5千人あまりの都市である。春日部市のホームページによれば「都心から35キロメートル圏、関東平野のほぼ中央にあり、首都圏の交通の要衝となっている」とある。確かに市の中心部を主要幹線道路である国道4号と国道16号が通っていることから交通の利便性が高く、物流の拠点としての立地に適した場所であることが見て取れる。

さて、昨今のネット通販の急速な拡大は、人々の生活を変えるとともに、企業の物流の在り方にも一大変革をもたらしている。注文してから翌日、あるいは当日に配送するサービスが一般化すれば、物を運ぶ側にとって生産性を向上させなければ対応ができなくなることから、各地で物流倉庫の建設が進んでいる。

この工事の発注者である株式会社シーアールイー様は、物流不動産を中心に全国で約1400物件、約138万坪にも及ぶ不動産の運営管理を行っており、物流不動産特化の管理会社としては国内最大規模である。(2017年10月時点)

今回シーアールイー様が計画された倉庫は、ワンフロアが約2180坪の3階建で、1階のトラックバースを北側・東側の2面に、計26台の接車バースを設け、複数テナントによる分割使用にも対応可能としていたが、本年10月に物流関連企業が一括賃貸することとなった。これは、施設のスペックや最寄り駅から徒歩圏であることなどが評価されたものであり、交通の利便性の高さが契約の鍵の決め手になったのであろう。

コストと美観に優れるRCS接合構法を採用

さて、この工事は当社の設計施工で進められている。物流倉庫に求められるのは、柱と柱の間隔が大きく広い空間であることから、構造としては圧倒的に鉄骨造(S造、「S」はSteelの略)が多いのであるが、ここ数年首都圏ではS造建築が急増しており、鉄骨の価格(材料と施工費)が上がっている。

そこで当社が提案したのが、前田建設工業㈱、㈱銭高組と当社とで開発した「RCS接合構法」である(東洋建設式RCS接合構法*。TOYORC-S)。

RCS構法とは、柱をRC造(鉄筋コンクリート造、「RC」はReinforced Concreteの略)、梁はS造とするものであるが、3社で開発した「RCS接合構法」は、より高いコスト競争力を持つとともに、設計の自由度を拡大したことが特徴だ。

構造設計を担当した建築事業本部設計部の木戸聰課長は、「コスト面で優位性があったことと美観に優れていること」をRCS接合構法の採用理由に挙げる。「鉄骨工事の価格が上昇傾向にありましたので、この構法を採用するのは自然の流れでした。また、お客様からは柱にRC、床にPC床版を使用することで、美観に配慮した空間となっていると高評価いただいております」と語る。

また、RC柱の方がS柱と比べて剛性が高いことにより常時、中地震時の揺れが小さいこと、耐火被覆や衝突防止の根巻きコンクリートが不要であることなどメリットは大きい。

東洋建設式RCS接合構法* 正式名称は「前田建設・銭高組・東洋建設式RCS接合構法-梁貫通型柱RC梁S構造の接合部構法-(改定3)」。性能証明番号:GBRC性能証明第08-13号 改3

RC柱とS梁の接合部
デジタルモックアップ
RC柱とS梁。梁の上にはPC床版が載る
柱梁接合部を柱に取り付ける
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建築事業本部設計部 木戸聰課長

綿密な重機作業計画が工事進捗の鍵

RCS接合構法を採用したこの工事は2017年4月に着工、同年12月上旬の時点で2階部分のRCS工事が行われていた。当該地区の建ぺい率は60%であり、重機作業には十分なスペースがあるように思われるが、実際にはそれほどの余裕は感じられない。

この工事の責任者である高原邦夫所長は、工事を進めるうえで「重機作業計画が命」と語る。「開発工事を行なっている時に、施工手順を検討し1日毎の重機の作業計画を立案しました。しかし、実際には資材の搬入など様々な要因によって、当初の計画どおりにはいきませんので、日々作業計画の見直しを行っています。重機が輻輳すれば安全が確保できず、工事をストップさせることになり、結果的に施工が遅れてしまいますので、事前の検討が欠かせません」。

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高原邦夫所長
重機作業計画。重機が輻輳しているのが分かる

この日の作業でもクローラクレーン3台、ラフタークレーン1台に生コン打設のポンプ車が配置されており、作業スペースは狭い。

2階に上がると、RC柱への生コン打設や型枠の取り付けを行っていた。生コン打設にはディストリビューターと呼ばれる機械が使われているが、これはポンプ車だけでは打設場所まで届かないことから採用されたものだ。コンクリートホッパーを使って打設する方法もあるが、このディストリビューターを使うことで、クレーンの拘束時間を少なくできるので作業効率がアップする利点がある。

RC柱の型枠はドイツ製を採用。セパレーターが不要であることや移動が容易であるなどメリットは多い。高原所長が「この現場では、今までやっていなかったことに取り組んでいます」と話すとおり、従来の発想にとらわれない施工方法を取り入れているのが見て取れた。

お客様の今後の事業展開に欠かすことのできないこの倉庫の完成まで残り半年あまり。年明け以降、建物の仕上げに向けて多忙になってくると予想されるが、若い職員も多く活気溢れるこの現場は、チームワークで困難をクリアしていってくれるであろう。

ディストリビューターによる生コン打設
型枠の取り付け
青空に映えるRC柱
1階のトラックバース
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作業所メンバー。後列左から坂巻真穂(事務担当)、木戸聰(構造設計担当)、天間憲博(関東建築支店建築部部長)、高原邦夫(作業所長・監理技術者)、室津安男(副所長)、柴田拓哉(係員)、レイランド(CCT研修生) 前列左から佐竹拓磨(係員)、下沢亮(工事課長)、福永竜馬(係員)、佐藤桂輔(係員)、ウィルマー(CCT研修生)
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完成予想パース
工事名称 ロジスクエア春日部倉庫新築工事
工事場所 埼玉県春日部市永沼2119-1他
工期 2017年4月1日~2018年6月30日
発注者 株式会社シーアールイー
設計者 東洋建設株式会社一級建築士事務所
施工者 東洋建設株式会社
建物概要

RCS造地上3階建

 建築面積7,948.57㎡ 延床面積22,187.34㎡ 軒高23.05m