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統合して高度化されるごみ処理施設
千葉県「東総地区」。関東以外の方は聞きなれない方もいらっしゃると思うが、千葉県の東部にある銚子市・旭市・匝瑳(そうさ)市を含む地域を指し、人口はおよそ16万人強である。(2020年1月1日現在)
現在、東総地区内で発生したごみは銚子市、旭市、匝瑳市各々にある施設でそれぞれ処理されているが、稼働後26年~35年と老朽化が進んでおり、ごみ焼却施設の耐用年数と言われる20年を既に越えている。そこでこの事業の発注者である東総地区広域市町村圏事務組合様は、3市をカバーする統合施設の新設を決めた。その理由について同組合は3施設を別々に更新するよりも多くのメリットを得られるとしている。
ひとつには経済面。運搬距離の増はあるものの、施設の集約化により施設建設費や維持管理費などの削減が期待されること。ふたつめとして環境面。ダイオキシン類は比較的低温(300℃前後)で発生すると考えられているが、これは運転を始めたり止めたりする過程で通過する温度帯である。24時間連続運転で高温処理できる新施設では低温域を少なくできるため、ダイオキシン類の発生を抑制できる。もうひとつはごみ焼却の熱エネルギーの有効利用。リサイクルセンターを併設し、資源ごみなどを集約化することで効率的な再資源化の促進ができることである。
施工BIMを活用
工期末まで残り1年となった現場を訪ねると、躯体がほぼ出来上がりALC*による壁の施工に移行している状況にあった。この大規模プラント事業を設計・施工で請負ったのは日鉄エンジニアリング株式会社様。当社は協力企業として建物の建築工事に当たっている。現場には当社だけでなくプラント関連工事企業が数社入って輻輳しながら同時施工を行っており、互いの作業場所と内容を確認し調整する会議が日々行われている。これが現場運営における最重要ポイントのひとつであるが、そこで威力を発揮するのが施工BIMだ。互いの作業が干渉し合わないように施工場所を交換しながら進めており、それを2次元と3次元のステップ図で可視化することにより関係者全員の共通認識を図ることができている。
ALC* 「軽量気泡コンクリート」とも呼ばれるコンクリートの1種。内部に気泡の穴がある軽量な素材でできており、断熱効果や耐久性も備えることから、多くの用途で使用される。
心を砕いて現場に接する
建築工事の責任者である永江敏之所長の後ろについて現場を見て回る。職員は当社14名に派遣職員1名を加えて15名、作業員は多い時で300名の大作業所を率いる所長だ。これは何だ、あれはどうだと説明して歩きながらあちこちで立ち止まっては安全通路のバリケードを直す、垂れ幕を掛け直す、何かしら落ちているものを拾う。50mは離れていようかという職員や職長を見つけては大声で呼んで指示を出す。その声に職員もよく応える。所長だけではない。現場に出ている職員もよく走り回っている。躯体を担当する井桁係員も内外装を担当する松村係員もタブレットを片手に現場の状態をチェックしては指示を出していた。
とにかく甲斐甲斐しく動く皆の姿を見ると、心を砕いて現場に接していることを感じる。施工BIMという先進技術が現場を支える片方の車輪ならば、こうした現場を思う心がもうひとつの車輪であり、その両輪が見事に揃っているのがこの現場ではないだろうか。
敷地の東端には工事を開始してすぐに造成した調整池がある。縁に立つのは場内の雨水排水等を処理する多機能型濁水処理装置(汚濁処理・pH調整)である。工事中はこの装置で汚濁・pH処理して調整池へ放流するのだそうだ。「場外に汚染水を流出させないよう設置しています。あまり環境にはイメージの良くないごみ処理施設の工事だからこそ、環境にはより一層の配慮をしています」。と永江所長。
「工程については、造成工事から鉄骨工事(2020年1月31日完了)までマスター工程通りに進捗しています。特に昨年夏から着手となったプラント工事との連絡調整については密に行っており、工程厳守中で高評価を頂いております。また安全についても無事故・無災害を継続中であり、2021年3月31日の竣工まで無事故・無災害、工程厳守、高品質建築物の作成を目指して職員一丸となって向かっていきます」。そう力強く語る所長の顔を見て、完成まで工事の進捗と安全が揺らぐことはないだろう。そう確信して現場を後にした。
工事名称 | 東総地区広域市町村圏事務組合広域ごみ処理施設 整備及び運営事業建設工事 |
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工事場所 | 千葉県銚子市野尻町 |
工期 | 2018年2月9日~2021年3月31日 |
発注者 | 東総地区広域市町村圏事務組合(日鉄エンジニアリング株式会社) |
設計者 | 日鉄エンジニアリング株式会社 |
施工者 | 東洋建設株式会社関東建築支店 |
建物概要 | ごみ焼却場・管理事務室等 |