工事ルポ

令和3年度 鹿児島港(谷山二区)係留施設築造工事(第2次)

鹿児島湾(錦江湾)の先には桜島。現場から良く見える

南の海を警備する最前線

桜島を正面に望む鹿児島市谷山二区。ここで第十管区海上保安本部の巡視船を係留する施設の建設が進められている。
第十管区海上保安本部は、鹿児島、熊本及び宮崎の3県とその周辺海域を管轄区域とし、南九州周辺から東シナ海に及ぶ南北約700キロメートル、東西約1,000キロメートルの広大な海域を担当している。(第十管区海上保安本部HPより引用)一方、最近沖縄周辺の海域を巡る情勢は緊張感を増しており、従来の管轄区域に加え、南西諸島や尖閣諸島周辺海域を管轄する第十一海上保安本部の支援をしていくため、6,000㌧級の巡視船を現状から2隻増やし6隻体制とすることとなっている。今回紹介する工事は増加する2隻の係留施設を建設するもので、2024年2月末の完成の予定となっている。なお、6隻が係留できる施設は国内最大であり、南の海を警備する重要性が増していることが分かるであろう。

現場位置図
現場位置図

ケーソン11函の連続据付が工事の鍵

今回の工事の特徴を木志英樹所長は、「下から上までの一気通貫の施工」にあると言う。主な工事内容は、海上地盤改良から始まり、基礎捨石投入・均し、ケーソン据付、上部コンクリート打設、舗装工などであるが、通常であれば分割で発注されるようなボリュームだ。
これが一括で発注された理由は、係留施設の供用開始時期が決まっており、一気通貫の施工で行わないと間に合わない恐れがあるからだ。

現場を統括する木志所長

その上で木志所長は、「1函あたり約2,200㌧の重量があるケーソンの据付けが11函あり、その据付時期をいつにするかが全工程の鍵となりました」と言う。
当然、第十管区海上保安本部の巡視船運航の妨げにならない時期でなければならないが、大型起重機船の手配も大変なのである。「日本にこのサイズのケーソンを吊れる大型起重機船の数は限られていて、保有している会社では年間の稼働スケジュールを決めています。ですから、第十管区海上保安本部と調整し、着工段階でケーソン据付時期を決めました」と話す。海上保安本部に他の2つの桟橋に巡視船を係留しない時期を設けていただいたのである。よって、前段階の施工に遅延を生じさせるわけにはいかないのだが、建設現場に想定外の出来事は付き物。特に気象・海象は人知の及ぶところではないが、幸いにも大きな台風の来襲はなく、当初想定どおりの時期(2023年2月)にケーソンの据付けは実施された。
そのケーソンの据付けであるが、巡視船運航スケジュールや大型起重機船の拘束期間の関係で11函を連続で据え付けなければならない。
ここで威力を発揮したのが、当社が開発した「函ナビ―AUTO*」である。このシステムは、ケーソンの位置と注水状況を計測し、パソコン画面上にケーソンをリアルタイムで表示するとともに、これらの情報をもとにケーソンへの注水作業と引き寄せウインチ操作を自動で行えるものである。
従来のケーソン据付作業は、うねりの影響などによりケーソンが動揺するので据付精度のほか、ケーソン上に人が立ち入ることから安全性に課題があったが、「函ナビ―AUTO」によりその課題が解消されている。実際、今回のケーソン平面据付位置は、許容範囲の±15㎝に対し5㎝と極めて高い精度で据え付けられている。
このほかにも、上部工でハーフプレキャストを採用して現場作業を減らすことで、省力化と生産性の向上を図るなど、完成に向けて順調に工事を進めている。

函ナビ―AUTO*
深層混合処理船(DCM6号)による地盤改良
3,500t吊起重機船によるケーソン据付
高い精度で据え付けられた11函のケーソン(左下)右側の桟橋に巡視船が2隻係留されている。
ハーフプレキャストの据付状況
埋設前の係船柱。通常では見られない光景

仕事に誇りを持ち、良いモノを造る

この工事は当社とみらい建設工業の共同企業体で、総勢10名が従事している。構成は50歳以上が4名、残り6名が20代(内、2名が女性)とかなり極端だが、見る限りは非常に雰囲気がよくコミュニケーションが取れている。
木志所長は「ここはお客様(海上保安本部)の顔が見える現場です。お客様も良い品質の施設を期待していると思いますし、我々も良いモノを造りたいという気持ちが強い」と話し、また「見られていると思うので、やりがいもあります」とも言う。
そして、若手職員に対し「国の安全に係る大きな事業に携わっていることに、誇りを持ってほしい」とし、さらに、「地盤改良、基礎工事からケーソン据付、上部工に至るまでマリコンならではの仕事が全て入っていますので、若い人達にとって大変良い経験になります」と話す。
2024年2月の完成引渡し、そして4月からの供用開始に向け、これから追い込みに入る。ベテラン、若手が一体となって最後まで安全作業をお願いしたい。(取材日:2023年11月2日)

現場の確認をする若手職員
前列左から
濱田菜月(工事担当)、久保田美紀(同)、塚田理絵(財務部・取材同行者)、木志英樹(現場代理人・作業所長)、村田祐輔(工事担当)、三木康平(〃)、後列左から栗原史良(監理技術者)、西克之(工事担当)、野元伸(〃)、堂下幹生(〃)、志田和人(主任技術者)
工事名称 令和3年度 鹿児島港(谷山二区)係留施設築造工事(第2次)
工事場所 鹿児島市七ツ島二丁目地先
工期 2021年7月13日~2024年2月28日
発注者 国土交通省九州地方整備局
施工者 東洋・みらい特定建設共同企業体
工事概要

標準灯設置・撤去・管理

4基

汚濁防止膜設置・撤去・管理

60m

海上基盤改良工(敷砂・深層混合処理工)

1式

高圧噴射撹拌工

1式

基礎工(基礎捨石(1))

182m

基礎工(基礎捨石(2))

185m

基礎工(基礎捨石(3))

31m

本体工(ケーソン据付)

11函

上部工

210m

裏埋工

1式

舗装工

1式

付属工

1式