基本的な考え方
気候変動問題は、地球規模課題の中で最も重要な課題の一つであり、東洋建設グループにとっても最重要経営課題の一つです。
当社グループは、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の一つに「カーボンニュートラル社会の実現」を掲げ、事業活動での温室効果ガス排出量の削減に取り組むとともに、カーボンニュートラル社会実現に貢献すべく、2025年9月に「洋上風力事業本部」を「GX事業本部」に発展させ、再生可能エネルギーの主力電源化のカギとなる洋上風力発電の関連事業にとどまらず、海洋、海底資源の開発や海底直流送電線事業、CO2の回収・貯留(CCS)など多岐にわたる分野の事業参画に取り組んでいます。
東洋建設グループの温室効果ガス排出量
一般的に建設施工時(Scope1、2)に排出される温室効果ガスは、重機などの建設機械が主な排出源となりますが、東洋建設が得意とする海上工事では、A重油を燃料とする作業船が主な排出源となります。そのため、当社では、作業船運転時での温室効果ガス排出量の削減が最重要課題であり、環境配慮型エンジンへの換装や、A重油から軽油への燃料転換を実施しています。今後は、GTL※やバイオ燃料への転換や作業船から排出される温室効果ガスの回収・固定化技術の確立に取り組んでまいります。
また、サプライチェーン(Scope3)での排出量削減においては、サプライヤーをはじめ関係各所との連携が必要になりますが、自社でできることとして建築工事での低炭素型環境配慮コンクリートの使用、そしてZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)・ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の提案・採用の拡大に取り組んでいます。
Gas To Liquidの略。天然ガスから作られ、硫黄分やベンゼン、ナフタレンなどの芳香族分をほとんど含まない、環境負荷の少ない液体燃料。
2030年に向けた中期温室効果ガス排出量削減目標で
SBTイニシアティブの「1.5℃目標」の認定を取得
東洋建設は、2050年カーボンニュートラル達成に向けた温室効果ガス排出量削減の取り組み強化の一環として、2024年度に中期目標の見直しを行い、新たに2023年度を基準年とする目標を設定しました。
この中期目標は、パリ協定が定める地球の気温上昇を産業革命前より1.5℃に抑える科学的根拠に基づいた目標として、国際的なイニシアティブ「SBTi(Science Based Targets initiative)」から認定されました。
目標達成に向け、当社では、Scope 1・2(自社の直接事業活動による温室効果ガス排出量)においては、重機や作業船での省燃費運転の徹底、省エネ設備の導入、化石燃料から再生可能燃料等の非化石燃料への転換など、Scope 3においては、ZEB/ZEHの推進や低炭素・脱炭素資材の利用などに取り組んでいきます。
東洋建設グループの温室効果ガス削減目標と主な削減策
| SCOPE 1・2 (自社の直接事業活動による排出) | SCOPE 3 (カテゴリ1・11) (サプライチェーン領域での排出) | |
|---|---|---|
| 基準年 | 2023年度 | |
| 中期目標 (2030年度目標) | 42%削減 | 25%削減 | 
| 長期目標 2050年度目標 | NETゼロ達成 | ー | 
| 主な排出削減策 | 【Scope 1・2】 
 【Scope 3】 
 | |
管理型海面処分場でのCO2貯留・固定技術
東洋建設は、日本国内の管理型海面処分場の建設工事や廃棄物埋立業務に数多く携わっています。処分場内の埋立地盤や水には、焼却灰や鉱さいなどの埋立廃棄物に由来してカルシウムイオンが豊富に存在し、かつアルカリ性になっています。そのため、管理型海面処分場は、二酸化炭素を炭酸カルシウムとして固定しやすく、また水深20m以浅に造成されているため、直接空気回収(DAC※)を含め、陸上・水中部ともにCO2を固定するためのエネルギーは比較的小さいという特性があります。
当社では、このような管理型海面処分場の特性を活かしたCO2固定技術の開発、実用化に向けた実証実験を愛知県の衣浦港3号地廃棄物最終処分場を対象に実施しています。この取り組みは愛知県が主催する「あいち環境イノベーションプロジェクト」に採択され、同処分場に近接する工場の排ガス中のCO2を回収し、同処分場に貯留する取り組みも検討しています。当社は、同処分場でのCO2固定量について、2030年度に1,000t-CO2/年以上を目標としています。
当社のこの取り組みは、CO2固定化による温室効果ガス削減だけでなく、海面埋立処分場の保有水、浸出水の中性化による埋立処分場の早期廃止、そして埋立廃棄物の浄化による処分場の跡地利用促進が期待できます。
※Direct Air Captureの略で、大気中から直接CO2を分離して、回収する技術。
CO2の貯留・固定化技術の概要
作業船でのバイオ燃料導入
海上工事を得意とする東洋建設は、作業船を数多く保有しています。作業船の主燃料は温室効果ガス排出量が多いA重油であり、作業船の稼働による排出量削減が喫緊の課題となっています。
当社は、排出量削減の取り組みの一環として、2025年3月に施工した大阪湾における工事において、海上工事用の作業船「DCM6号船(深層混合処理船)」の燃料としてバイオ燃料を導入しました。
バイオ燃料は、原料の成長過程で行われる光合成によるCO2の吸収量と、燃焼で排出されるCO2の排出量が相殺され、大気中のCO2の増減に影響を与えない「カーボンニュートラル」燃料であり、またその利用において既存のディーゼルエンジンの換装などが不要で、船舶用燃料の代替燃料として利用の拡大が期待されます。
当社は、作業船でのバイオ燃料利用が温室効果ガス排出量削減に有効な手段の一手であると考えており、バイオ燃料の使用による機器類への影響等を検証したうえで、今後も海上土木工事においてバイオ燃料を積極的に導入し、温室効果ガス排出量を削減していきます。
DCM6号船


